空
   黄砂とPM2.5(環境科学調査センターだより4号から抜粋)  
 
  
 
千キロメートル先からやってくる「黄砂」

 毎年春になると黄砂が飛来します。黄砂の付着で洗濯物や車が汚れるなど、私たちの生活に少なからず影響を及ぼしています。黄砂は、一体どこから飛んでくるのでしょうか。
 代表的な黄砂の発生地域は、タクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原です(図1)。これらの地域で強い風が吹くと大量の砂が巻き上げられ、周辺に農業生産や生活環境に重大な被害を与えることがあります。そして、巻き上げられた砂の一部が、偏西風により運ばれ日本へ飛来します。
 名古屋市内では、毎年4日程度黄砂が観測されています(気象庁による目視観測)。
      
          図1.黄砂の発生地域(出典:環境省ホームページ)
 

黄砂とPM2.5の関係は?

 環境科学調査センターでは、屋上に採取装置を置き、黄砂やPM2.5(微小粒子状物質)の調査・研究をしています。黄砂が飛来した時のPM2.5の濃度はどうだったでしょうか。
 2010年3月20日から21日にかけて、日本へ大量の黄砂が飛来しました。20日10時から翌日10時まで、環境科学調査センター屋上(名古屋市南区)で採取した大気粉じん(大気中に浮遊する約100マイクロメートル以下の粒子状物質)のろ紙をみると、黄色になっていました(図2)。
 また、大気粉じんの濃度は、急激に増加して、前日に比べて約9倍になりました(図3)。一方、PM2.5の濃度は、大気粉じんほど大幅ではありませんが、約4倍に増加しました(図3)。
 黄砂は一般に炭酸カルシウムを多く含むことから、大気粉じん、PM2.5それぞれに含まれるカルシウムイオンの濃度を測定しました。その結果、3月20日に、どちらも濃度が増加していました(図4)。以上の結果より、PM2.5の濃度増加の一因は黄砂によるものと推
定できます。
 ただし、大陸から黄砂と一緒に飛来した汚染物質が反応して粒子となる場合や、名古屋市近傍で発生した粒子も考えられるため、濃度増加の原因がすべて黄砂とは言えません。環境科学調査センターでは、今後も調査・研究を行い、その実態把握に努めていきたいと
思います。
              環境科学調査センター屋上で採取した大気粉じん
                (サンプリングは10時〜翌日10時で行っている。)
                  
                 図2.黄砂飛来時の大気粉じんの写真

       
        図3.大気粉塵及びPM2.5の質量濃度推移   図4.大気粉塵及びPM2.5中のカルシウムイオン濃度推移



 名古屋の黄砂をチェック

名古屋へはどのくらい黄砂が飛来しているの?

 気象庁が行っている目視による黄砂観測の結果をみると、年によって日数は違いますが、毎年観測されていることがわかります(図5)。
         図5.名古屋市内の黄砂観測日数

事前に予測することはできないの?

 近年、多くの研究機関等が、濃度予測をインターネット上で公開しています。例えば、気象庁の黄砂情報、九州大学と国立環境研究所共同の化学天気予報システムCFORS、九州大学のSPRINTARSがあります。